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5話 シャルの思い

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2025-07-03 07:00:33

♢変わってしまった関係

 思い出したように怯えた表情で話してきたシャルは、話し終わる頃には表情を変え、顔を赤くさせていた。

 まあ……あれは、怖かったと思うけど。シャルは俺たちをパーティだと思っていたのに、何の相談もなしなのか? 会いに来ないばかりか、他の男子と仲良く遊んでいて、今更「やり直そう」って言われても無理だろ。

「冒険者になりたいなら、他の男子とパーティ組めば良いじゃん。仲良さそうだったろ。俺はアリアとパーティを組んでるし」

 ユウヤが突き放すように言うと、シャルは泣きそうな顔で訴えた。

「うん……知ってるよ。私も一緒に……。私は、前衛だしさ……力になれるよ。絶対!」

 残念だけど、前衛は必要ないんだよな……むしろ、入られると動きにくくなると思う。 シャルが加わるとなると、支援魔法に回復魔法、それに援護魔法まで必要になるだろ? でも今のところ、アリアと一緒に魔物討伐してて、支援も回復も一度も使ったことがない。 それどころか、攻撃を受けたことさえ一度もない――そういう意味では、かなり優秀なパーティなんだ。 まあ、まだ低級の魔物ばかりだけどさ。

「必要ないって。他で頑張ってよ……。一緒に遊んでた男子も、冒険者を目指してるんだろ?」

 ユウヤは、シャルの目をまっすぐ見て言った。

「え? そんなぁ……。別に、あの友達は暇つぶしで遊んでただけで……。ユウくんみたいに仲は良くないよ。一緒のパーティになろうとも思わないし……そこまで信頼はできないしさぁ」

 シャルは、必死に弁解した。

「いきなり何も言わずに消えたと思ったら、他の男子と仲良く遊んでるし。俺が上手くいきだしたら、やっぱり一緒にって無理だって。友達としては良いけどな。まあ……来年には、この村を出ていくけどね」

 ユウヤがそう告げると、シャルは顔色を変えた。

「いやっ。わたしを置いてかないで……! これからもユウくんと、ずっと一緒にいたい!」

 隣に座る俺に、珍しくシャルが抱きついてくると、顔を上げて目を潤ませて見つめてきた。昔なら喜んでいただろうけどな……。

「俺に粘っても無理だよ。それなら、仲の良い男子とパーティを組むことを考えた方が良いよ。それか他のパーティを探しなよ」

 ユウヤは、冷静に言い聞かせた。

「……ごめんってば。許してくれないかなぁ……お願い。ね?」

 抱きしめながらお願いされると、昔なら許していたが……。今は面倒にしか思わないし。早くこの話が終わらないかとさえ思っていた。

「今更、パーティを変更するのは無理……」

 ユウヤがはっきりと言うと、シャルは愕然とした顔で聞き返した。

「は? えっと……アリアのことが……好きなの?」

「好きだぞ。可愛いし、優しいし、無理なことを言ってこないし、素直で魔法も強いしな」

 ユウヤは、一切迷いなく答えた。

「……え? 私は……?」

 シャルが泣きそうな顔をして聞いてきた。ん? パーティを断った時よりショックな表情をしているけど。質問の意味が分からないんだけど? 好きかってことか?

「は? シャルのことが好きかってことか?」

 ユウヤが問い返すと、シャルは小さく頷いた。

「……うん」

「まあ……毎日会ってたし、好きだったな……」

 正直、昔は好きだったけど……。今はと聞かれると、普通の友達か、それより少し仲の良い友達って感じだよな。

「じゃあ……今は?」

 シャルは、震える声で尋ねた。

「嫌いじゃない。好きでもなくなったかな……。少し前は他の男子と仲良く遊んでるのを見て、ヤキモチを妬いてイラッとしたくらいだけどな」

 ユウヤが率直に答えると、シャルはさらに困惑した。

「な、なんで? 何で変わっちゃったの? ねぇ」

 なんで? なんでだろう……? 会わなくなったから? アリアとパーティを組んで気が楽になったからかもしれないな。シャルと一緒にいると疲れていたのかもしれない。シャルは統率力が高すぎて、俺は必死でついていく感じだったし……。今は解放された気分になったな。これは言えないけど。

「なんでって……。捨てられて裏切られた感じがしてたな。シャルが来なくて心配をしていたら、それが他の男子と仲良く楽しそうに遊んでたしな。最悪な気分だったな」

 ユウヤは、正直な気持ちをぶつけた。

「ごめん……そんなつもりじゃ。そうだね……私もアリアとユウくんが一緒にいるのを見て、ヤキモチを妬いたかも……今もだけどさぁ……」

 これじゃ恋人の別れ話をしてるみたいじゃないか。付き合ってもいなかったし……。もう良いだろ。話が終わらない気がする。

「な〜、日が暮れてきたから帰れって」

「まだ大丈夫……家近いし」

「話し合っても変わらないぞ?」

「ねー。お願いっ!」

「無理だって」

「約束してたのに、酷い!もう良いよ!勝手にすれば……!?もう知らない!」

 日が暮れるまで、同じような話をしてシャルが怒って帰っていった。

♢隠された真実と新しい目的地

 翌朝……

 朝食を食べ終え、出かける準備ができた。ドアを開けると、シャルが家の前の道をうろついていた。

 うわぁ。昨日は怒って帰ったのに、待っているってことは……付いてくる気だよな? 帯剣をしているし……。

 開けたドアを閉め、直接転移でアリアとの待ち合わせ場所へやってきた。

「わぁっ! ゆ、ユウくん……珍しいね……? 転移で来たの?」

 アリアは、驚いた顔でユウヤを見た。

「寝坊しちゃってさ」

 ユウヤは、苦笑いをし、頭をかきながら言った。

「えぇ〜!? ユウくんが寝坊?それも珍しいねっ」

 アリアは、さらに驚いた。

「冒険者になったから嬉しくて、なかなか寝られなくてさ」

 ユウヤは、適当な理由をつけた。

「そうなんだ〜? 私も嬉しかったけど、すぐ寝ちゃってたぁ〜♪」

 アリアは、俺とはよく話すけど、他の人と話しているところはあまり見かけない。 そんなところも、可愛いなって思える。 ……なんだか、アリアにとって俺は特別な存在なんじゃないか――そんな気がしてくるんだよな。

「昨日ギルドで、地図を買って見てたんだけど。良さそうな場所を見つけたんだけど、これから行ってみない?」

 ユウヤが提案すると、アリアは少し不安そうな顔をした。

「えぇ〜? 初めて行く場所で薬草採りは難しいよぉ〜。それに危ないと思うよ」

 本当は地図など買っておらず、上空に転移して村の周囲を自ら把握していたのだ。 さらに少しずつ範囲を広げ、人の寄りつかなそうな場所を探し出した。 何度かその場所を訪れて、魔物や魔獣の動向を確認し、薬草が群生する地点を調べ上げた。 つまり、すでに下調べは済んでおり、安全で薬草も採取できる場所であることは確証済みだった。

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